30代機械設計エンジニアが田舎の企業へ転職するためのロードマップ

「田舎での暮らしは憧れるけど仕事がなぁ・・・」と考えている方は多いのではないでしょうか。
筆者も最初は田舎=農業、漁業、林業のイメージがありました。
しかし、調べてみると意外にも移住前と同じ職種の転職先が多いことに気づきました。
本記事では、筆者の田舎への転職体験談を交えて30代の機械設計エンジニアが転職するまでのロードマップについて、解説します。
田舎への転職に興味のある方や、田舎での暮らしを考えている方にとって役立つ情報を提供します。
私は・・・
・田舎暮らし8年のアラフォーおじさん
・国立大学の機械工学系出身
・大手事務機器メーカーで7年機械設計をしていました
・現在は田舎の中小企業で機械設計のマネージャーをしています
・二人の子供の父
こんな筆者でも無事に転職できたので大丈夫です。一緒に素敵な田舎ライフを目指しましょう!
- 移住先候補の探し方
- 田舎の転職先の探し方
- 転職活動の流れ
- 内定後の移住準備
転職までのロードマップ

1|転職を考えた理由
2|移住先候補選定
3|転職準備
3-1|転職先条件
3-2|条件にあった転職先の探し方
3-3|機械設計エンジニアの需要
4|転職活動
5|内定後
5-1|退職報告、業務引継ぎ
5-2|移住先へ諸々準備
6|まとめ
1.転職を考えた理由
筆者は大手事務機器メーカーで7年勤務し転職しました。
二人目の子供が生まれてすぐぐらいです。
元々仕事は好きでしたが、一人目の子供が生まれて家庭を第一に考えるようになり、二人目の子供ももうすぐ生まれるというタイミングで転職を考え始めました。
何故転職を考えたかというと・・・
- 家族と向き合う時間が欲しかった
- 子供が生まれたことで時間の捻出を考えるようになった(自由時間の確保)
- 会社の家賃補助があと数年で切れる
- 大きい家に伸び伸びと暮らしたかった
- 会社の同僚、派遣さん達が次々とリタイヤ
他にもいろいろ理由はあるのですが、ざっくり考えるとこんな感じです。
筆者のなかで一番の理由は「家賃補助があと数年で切れる」です。(家庭じゃないんか~い)
このまま賃貸アパートに住み続けるか、マンション購入、戸建て購入or新築となりますが、どれもしっくりきませんでした。土地代、家賃全てが高いです。そうこうしている間に、会社の周りの人たちが次々にリタイヤし、仕事の負担も倍増したのでこれはもうダメだなと考えました。
いよいよ転職を決意しますが、同時にこのまま横浜で働いていいのか?と思ったわけです。
そこから田舎暮らしを視野に転職活動をすることにしました。
2.移住先候補選定
先ず、このまま横浜で暮らすか、田舎に移住するか項目毎にケーススタディをしました。特に筆者が重要視したのは、仕事環境、将来の住居、子供の環境でした。ここでは、筆者の移住先である燕市を比較対象としています。
検討項目 | 横浜:判定 | 燕市:判定 |
①仕事(年収) | ◎ | △ |
②仕事 (通勤、残業、ストレス、自分の能力活かせるか) | △ | ◎ |
③生活費 | 〇 | ◎ |
④住居(賃貸) (広さ、金額) | △ | ◎ |
⑤住居(将来) (広さ、金額) | △ | ◎ |
⑥子供(教育) | ◎ | △ |
⑦子供(環境) | 〇 | 〇 |
⑧子育て支援の有無 | 〇 | 〇 |
⑨地域環境(病院、スーパー、公共交通機関等) | ◎ | 〇 |
⑩自治体の移住支援 | – | 〇 |
このように自分が重要とする項目を洗い出し、点数化(難しければ上記のように〇、△)することで、総合的な判断ができます。
この場合はざっくりと◎:5点、〇:3点、△:1点とし、移住する方に軍配が上がります。
とはいえ正直なところ、住んでみないとわからないところはありますが、筆者の場合、各項目について次のように理由を考え点数付けをしました。
①仕事(年収):転職時は低くても、いづれ上がるだろう。生涯年収が低くても、生涯支出を抑えれば良い。
②仕事(環境):中小企業一択。そのために、中小企業が集まりそうな地域を選ぶ。できれば、競合が少なそうな独自製品を扱い、本社(経営・営業)が首都圏に所在がある会社で、可能であればオーナー企業(の中の一部の会社)を選択。
③生活費:安くなる。ガソリン代が増えるくらい(横浜でも車所持)
④住居(賃貸):駐車場込みで月10万程度(会社補助で3万)の2LDK⇒月7万で2階建て借家
⑤住居(将来):土地代で2700万円程の差額(50坪の場合)
⑥子供(教育):人口が多い横浜の方が、子供に十分な教育を与えれる機会が多い
⑦子供(環境):横浜はいろいろな遊びの施設、習い事等が充実している。田舎も習い事はそこそこだが、遊びは自然や広い公園等がある
⑧子育て支援の有無:横浜は子供の医療費無料(当時)、田舎もほぼ同等の支援内容
⑨地域環境:横浜は病院、スーパー、公共機関が全て揃っている。田舎もそこそこ揃っているところを探せば問題ない
⑩自治体の移住支援:燕市では首都圏からの移住で100万円
では、実際に移住先の探し方を紹介します。
移住先の条件は上記の10項目について、可能な限り現状と同等以上となります。その中で、いくつか妥協しなければいけない項目もあります。全てが完璧な場所などありません。
筆者が注目したのは、②仕事(環境)です。これを起点として筆者が考えた理想の移住先は下記になります。STEP1~3では、移住先候補をざっくり絞り込みます。STEP4,5でさらに絞り込みます。
高速道路IC、新幹線の駅周辺が狙い目
スーパー、病院、公共交通機関
つまり、大手企業が無くても地域産業が盛んであれば、そこに人口が集中し、地域環境が整っているのではないかと考えました。
但し土地代が高くては意味がないので、さらにこの条件にプラスして、土地代や子供支援、移住支援の有無を考えます。この時点で、移住先候補数はかなり絞れていると思います。
STEP1の地域産業が見つからない方は、高速道路IC、新幹線の駅周辺で検索するといいと思います。交通の便がいいと産業が発展しやすいですから。
ここで1つ注意しなければならないのは、必ずしも地域産業に転職する必要はないということです。地域産業が盛んであるというのは、あくまで移住先候補であって、転職先ではないとういことです。これについては、次の章で説明します。
最後に、候補となった移住先に実際に行ってみることをお勧めします。実際に行ってみないとわからないことは結構あります。特に子供(環境)については、大きな公園や、自然の遊び場、雰囲気等、現地でないとなかなかわからないので、是非足を運んでみてください。
3.転職準備
移住先への目星を付けながら、同時に転職先も視野に入れておかなければいけません。
ここでは、転職先の条件について筆者の考えを記載します。
3-1:転職先条件
必ずしも移住先の地域産業に転職する必要はないというのは、転職先の条件として筆者は下記のように考えたからです。実際に筆者の転職体験を通してこれは当たっていたと考えています。
・中小企業:仕事のノルマが緩い、残業が少ない
・競合が少ない、独自製品を扱っている:会社が安定している
・本社(経営・営業)が首都圏にある:首都圏を顧客として扱っている=安定している
・オーナー企業の中の一部の会社:グループ会社なので、会社が安定している
これらの条件は簡潔にまとめると、仕事のストレス、残業が少なく、会社の経営が安定している会社です。他にも優先順位は下がりますが、労働組合の有無、会社創立何年か等も考慮した方がいいかもしれません。(筆者はそこまで考えていませんでした)
地域産業に転職する必要がないというのは、地域産業は競合が多く、ノルマや残業が厳しい可能性があると考えたからです。それよりも、独自製品を扱っていて、且つ、首都圏に経営がある会社であれば、首都圏の顧客を相手に独占的に販売できているので安定していると考えました。
安定していれば、収入も最初は低くても、それなりに上がっていくだろうと考えました。
3-2:条件にあった転職先の探し方
筆者は下記のようにして転職先を探しました。
・転職サイト登録(大手転職サイト、地方に特化した転職サイト)
・転職サイトで募集している会社を確認
・会社名が載っていれば、その会社をインターネット等で調べる
・会社名が載っていなくても、会社の所在地や作っている製品で検索すると大体わかる。むしろ、検索して候補が多く出てくるようだと競合が多い=候補除外となる
・何の製品を扱っている会社なのかを入念にしらべる=独自性の調査
・会社の概要欄等に記載してある本社所在地がどこか確認する(東京が望ましい)
・経営者(社長、会長)の名前を調べて、グループ会社の項目に同じ名前がないか確認する。名前があれば、オーナー企業である可能性が高い
ここで大切なのは、独自性の調査です。
独自性が高い製品の見極め方ですが、筆者は下記の項目について注視しました。ここで機械設計エンジニアの知見が役にたちます。
①製品をパッと見て製作方法がわからない=参入障壁が高い
②大きすぎる製品を扱っている=機械加工、金型、鍛造、鋳造等の金額が高い=参入障壁が高い
③見たことがない製品を取り扱っている=一般には使用されていないので特定の業界に需要がある製品
④材料や機械要素(ネジ、軸受け等)を扱っている会社は除外=需要が多いが競合も多い
これらの調査条件に合致する会社で且つ本社経営が首都圏にあれば、そこそこの顧客を確保しながら、独自製品を扱っており、安定している会社とみなすことができると思います。
優良企業の探し方について詳しくは、こちらの記事を参考にしてみて下さい。

3-3:機械設計エンジニアの需要
ここまでで、移住先、転職先の目星をつけましたが、肝心の求人があるのかという点についてです。
結論からいうと、中小企業においては、機械設計エンジニアは需要が多いです。
中小企業はモノ作りがメインの業務なので機械設計が出来る人間は必ず必要とされます。にもかかわらず、工業高校卒・大卒のエンジニアは大手に就職する傾向が強いので、なかなか中小企業にエンジニアが集まりにくい傾向にあります。(筆者の経験から)
加えて、中小企業は田舎ということもあり常に後継者不足なので、30代の機械設計が出来る人間は引く手数多なのです。つまり収入の面においても何かしら交渉の余地はあります。
実際に筆者も面接時に給料の交渉はしましたし、今の会社でも、機械設計エンジニアを募集していますが全く集まりません。(誰か来てください)
最後に転職前後の仕事の状況ですが、仕事内容は全く異なります。扱っている製品が違うので当然です。しかしなが、
大手では仕事の進め方はほぼ会社によって決められていたが、中小企業ではいい意味で設計者の自由に仕事進められるので、材料・部品も好きに選択できます。その分大変なことは多いですが、その分機械設計エンジニアとしての知見が広がり、スキルアップできていると考えています。
4.転職活動
移住先、転職先の候補が決まればあとは一般的な転職活動します。
・職務経歴書作成
・転職サイト・企業のHP等から応募
・書類審査
・採用試験・面接
・内定
という流れになります。
例え中小企業といえど、大手企業に転職するつもりで臨んでください。引く手数多といっても、選ぶ権利は会社にあります。
特に職務経歴書は、自分をアピールできる書類なのできちんと記載して下さい。中小企業の場合、書類審査だけでほぼ内定という会社も多いです。また、本社が首都圏にあるということは、本社の人間はそこそこの学歴を持った人がいる可能性も有ります。そのためにも、きっちりアピールできる書類を作成することが大切です。
内定が決まる際に、会社側から「いつから入社できるか」と聞かれます。会社はすぐにでも来て欲しいと願っていますが、あせって回答してはいけません。この後もろもろの準備があるので、2か月後くらいを目安に回答した方がいいです。
内定後というのは、とにかく忙しいです。特に移住先への引っ越しの準備、車の免許を持っていなかったら、免許取得の優先順位を上げて下さい。
さらには、今の会社のボーナス日や有休消化も考えて「いつから入社できるか」を回答してください。できるだけ丁寧に今の自分の状況を説明し、こういう理由だから入社までの時間が欲しいということを説明することが大切です。
5.内定後
5-1:退職報告・業務引継ぎ
転職先の内定が決まったら、すみやかに上司に退職する旨を伝えましょう。業務も他のだれかに引き継ぐことになると思います。
余談ですが、筆者の場合は退職まで2か月あったせいか、業務引継ぎどころか新しい製品の構想設計を新規で任されました(笑)
5-2:移住先へ諸々準備
最後のひと踏ん張りです。短期間の間に準備することがあります。
- 車の免許
- 車(とりあえずリースでもOK)
- チャイルドシート
- 現在住んでいる物件の解除・売却
- 移住先で住む場所探し(賃貸がおすすめ)
- 引っ越し業者見積
- 引っ越し準備
- 電気・ガス・水道の停止手続き
- 転出届の提出
- 児童手当受給事由消滅届の提出
- 印鑑登録の廃止
- インターネット手続き
- 子供の保育園、小学校等の手続き
- 郵便物の転送手続き
どれも大切なので漏れなく準備しましょう。特に田舎は車が必須なので、免許取得と車の用意は忘れずにしてください。車はとりあえずリースでいいと思います。移住して落ち着いたら、生活にあう車を購入しましょう。
6.まとめ
本記事では、移住先選定~転職先内定後の準備までを簡単に説明してきました。
簡単にまとめると下記になります。
①移住先候補選定:重要な項目を洗い出し、今の暮らしと移住先の暮らしを対比する。移住を決めたら、洗い出した重要な項目を満たせるような移住先を探す。おすすめは、地域産業が盛んな場所。
②転職先候補選定:移住先の地域産業はおすすめしない。会社の独自性を調査し、首都圏に顧客がある企業を探す。
③転職活動:職務経歴書をしっかりと書く。中小企業の場合、採用試験・面接は簡単なことが多い。いつから入社可能かはよく考える。
④内定後の準備:田舎は車が必須。免許取得、車の用意は優先度を上げる。
それでは、皆さん素敵な田舎ライフをお過ごしください。